イベント情報

新たな知見があった「ヒゲクジラ類化石」を県立山口博物館の常設展で展示します。

 当館の収蔵資料であるヒゲクジラ類化石についての論文が発表され、本化石はエティオケタス科に属すること、また、当時(およそ2800万年前)の北西太平洋で歯を持つ原始的なグループと歯を持たないグループの両方のヒゲクジラ類が共存していたことが明らかになりました。
 この化石標本は、「歯を持つヒゲクジラ類」の絶滅過程や現在生息するヒゲクジラ類の進化過程の解明につながる重要な標本の一つとされています。
 
1 展示開始日
   及び場所
令和6年4月16日(火)から2階地学常設展示室で展示
2 展示資料 ヒゲクジラ類の頭骨化石(エティオケタス科に属することが判明)
2013年に福岡県北九州市小倉北区馬島(芦屋層群)で牧野彰人氏が発見し、後に当館へ寄贈
3 参考 (1)論文

掲載雑誌名: Fossil Record(2023年12月22日受理、2024年1月11日公開)
タイトル: Coexistence of Oligocene toothed and baleen-assisted mysticetes in the northwestern Pacific(漸新世の北西太平洋における歯を持つヒゲクジラとヒゲ板を持つヒゲクジラの共存) 執筆者: 蔡(さい) 政修(まさのぶ)(国立台湾大学)、木村(きむら) 敏之(としゆき)(群馬県立自然史博物館)、長谷川(はせがわ) 善和(よしかず)(飯田市美術博物館)

(2)概要(群馬県立自然史博物館 木村敏之氏による)

@ 歯を持つヒゲクジラ類
ヒゲクジラ類はナガスクジラやミンククジラで代表される大型のクジラ類のグループです。現在生息しているヒゲクジラ類は口の中に歯を持たず、代わりにクジラヒゲと呼ばれるブラシ状の構造を持っています。ヒゲクジラ類はクジラヒゲを使って海水中の餌を漉(こ)しとって食べる濾過(ろか)摂(せつ)餌(じ)を行っており、濾過摂餌の獲得はヒゲクジラ類の進化を考える上で最も重要な進化イベントです。初期のヒゲクジラ類は原始的な特徴として口の中に歯を保持しているグループが知られており、「歯を持つヒゲクジラ類」と呼ばれています。エティオケタス科はその代表的なグループです。

A ヒゲクジラの歯
正確には現在のヒゲクジラ類でも胎生期の一部の期間には歯を持っており、その後消失します。そこで、実際に餌を噛んだりすることができる歯のことを「機能歯」と呼ぶことがあります。現在のヒゲクジラ類では機能歯を持っていませんが、初期の一部のヒゲクジラ類では祖先的な特徴として機能歯を保持していました。このようなグループは今回報告したエティオケタス科のほかにも、ママロドン科やミスタコドン科(最古のヒゲクジラ類)があります(いずれも絶滅したグループ)。

B 研究の意義
今回の研究により本化石は、原始的なヒゲクジラ類であるエティオケタス科に属することが明らかになりました。これまで同じ地層からは、現在のヒゲクジラのようなクジラヒゲを使って餌をとっていたと考えられる、エオミスティケタス科の化石(ヤマトクジラ Yamatocetus canaliculatus)が発見されていました。今回の発見により、当時(新生代 古第三紀 漸新世:3390万〜2303万年前)の北西太平洋では、歯を持つ原始的なグループと歯を持たないグループが共存し、多様な生態系をつくっていたことが明らかになりました。本化石標本は、「歯を持つヒゲクジラ類」の絶滅過程や現在のヒゲクジラ類の進化過程の解明につながる重要な発見となります。
3 観覧料 一般150円(団体120円) 学生100円(団体80円)
18歳以下及び70歳以上、高等学校・中等教育学校・特別支援学校等に在籍する生徒は無料。
団体は20名以上。
4 問合わせ先 ◇研究内容について
群馬県立自然史博物館 補佐(生物研究係長)木村 敏之 (きむら としゆき)(海生哺乳類担当)
〒370-2345 群馬県富岡市上黒岩1674-1 TEL 0274-60-1200

◇収蔵資料について
山口県立山口博物館 学芸課主任 赤ア 英里(あかさき えり)(地学担当)
〒753-0073 山口市春日町8−2 TEL 083-922-0294

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